20年の月日が流れたヤングクラシック124
W114/W115からW123へと続き、
さらにW124へと続く
メルセデスベンツEクラス
(ミディアムクラス)の歴史は
とても興味深いものがあると思います。
なかでもW124型は
もっとも素晴らしいクルマ
ではないかと私は思います。
それはこのクルマの持つ動力性能や
快適装備の数々が、決して現代のクルマに
匹敵するものではありませんが、
かと言って劣るというものでもないからです。
もっと言えば「これで十分」なものが用意されているのです。
かつてのメルセデスが持っていた過剰なまでの剛性感と
その精神が色濃く残る最後のクルマがW124型ということです。
さて、そんなW124型のメルセデスですが、
なぜか市場では「壊れやすい」という
ガセネタがまかり通っています。
これは私から言わせると間違いだと思います。
これらの症状は「消耗部品の交換時期が来た」
というのが正しい答えではないでしょうか?
この時代のメルセデスはクルマにとって
交換することのできない部分
(たとえばボディやシャシーなど)の
最重要部分のクオリティは格段に高くしています。
そして、それらを守るために各所にブッシュなどを用意しており、
走行中の振動や衝撃などはそれらのブッシュ類が吸収することで、
基本骨格の劣化を極力抑えているのです。
ですから、こういった各種消耗品が劣化することは
メルセデスにとっては最初から計算されたことであり、
それをいちいち「壊れた」だなんて言うのは
メルセデスの本当の基本的な考えを
理解していないということ以外には
考えられないと思うのです。
では、こう考えてみてはいかがでしょうか?
今やW124は新車での購入は不可能です。
ですから、中古車として購入する以外には方法がありません。
当然中古車ですから、最低でも20年以上は経過しています。
20年も経過しているのですから、
普通に考えてもプラスチックやゴム類は劣化しているでしょう。
でもそうだからこそ新車よりも格段に安く購入できるのです。
たとえばW124の最高峰に君臨する500Eは、
当初車両価格が1,580万円でした。
これに本革シートやサンルーフなどのオプションや
登録諸経費を加えると、
恐ろしいことに1,700万円を超える金額でした。
普通のサラリーマンでは逆立ちしても買えない金額です。
それがいまでは数分の一の価格で買えるのです。
ですから、そうやって購入したクルマに
必要な整備を施していったとしても、
その合計額はなかなか新車の価格には程遠いんです。
あぁ~、なんて良い時代に突入したのでしょう。
それなのにちょっと部品の交換が出たら
「あぁまた壊れた」だなんて言って、
騙し騙し乗るだなんて私には勿体ないとしか考えられません。
さっさと交換したほうが、
どれだけ精神衛生上良いのでしょうか?
メルセデスの素晴らしいところは、
そういう消耗品については現在でも流通しており
価格も抑えられているところです。
しかも最新のメルセデスのような
「アッセンブリー交換」ではなくて
「部分修理や交換」が出来るところなんです。
そして、それらの消耗品を交換すると格段に良くなるのです。
仮に足回りのブッシュ類の交換などを行うと、
一気に走りの体感が変わります。
まさに新車に近くなるのです。
これならお金を掛けた甲斐があるというものですね。
私が言いたいのは往年のメルセデスの良さを色濃く残しながらも、
現在の環境でも十分に通用するW124というクルマを
手に入れたのであれば、それを一生乗るつもりで
維持してほしいのです。ですから、
今日はこんな憎まれ口を書きました。
でもこれくらいの覚悟をもって所有してみて欲しいです。
そうすれば、あなたの元に来たW124は
ずっとそばにいてくれると思います。
その覚悟が無いのであれば、W124は乗らないほうが良いと思います。
そしてその覚悟がなければ、あの素晴らしく恍惚な余韻に浸れるほどの
乗り味には永遠にたどり着くことはできません。
W124の乗り味、それは現代のクルマが、
そして現在のメルセデス社でさえ
造り上げることの出来ないものなのです。
どうかこの稀代の名車であるW124を一台でも多く、
未来に残して欲しいと思います。
それがクルマが大好きで、
この時代のメルセデスが大好きな私の願いです。
廣川 俊憲